●一文不知

読み(ひらがな)

いちもん ふち

意味

ひとつの文字さえも、読んだり書いたり、できないこと。

解説

この四字熟語は、一文不通と同じ言葉です。仏教の書、「歎異抄」や「正法眼蔵随聞記」の中で使われています。 文字を読めないような凡夫であっても、阿弥陀仏を信じ念仏を唱えれば救われる。また、文字を知らない凡夫が、 座禅を専らに行えば、悟りに近づくことができる、ということのようです。 文字や言葉は、迷いを生む原因となり、悟りを得るためには邪魔になってしまう場合があるということだと思います。 文字や言葉は、人それぞれで受け取り方が違って、認知レベルでの格差があり、特に抽象名詞は固有名詞と違って 非常に不確定な要素を含んでしまいますから、それに執着してはならない、という意味があると思います。 少し分かりにくいと思いますので、もう少し説明を加えてみますと、言葉は、響きだけがあって、その言葉の中に 意味が含まれているのではなく、何の記憶を引き出すかは、その人、個人の経験によるところが大きいはずです。 文字の意味と、その人の記憶とが正しく、つながっていれば問題ないのですが、抽象名詞は、それを確実なものに することが、なかなか難しくなります。単語ひとつを取っても、このような曖昧さがあるということは、複数の 単語から成る文章となると、さらに、その不明確さが明らかになります。言葉は、コミュニケーションの道具と しては、とても大切なものですが、ひとつ間違うと、とんでもない誤解を生む可能性があると言うことです。 この四字熟語の参考となるものに、「不立文字」、「言語道断」、「維摩一黙」 があります。

重要語の意味

一文=「いちもん」と読み、ひとつの文字。  不知=「ふち」と読み、知らないこと。  文字=「もじ」と読み、言葉を記号であらわしたもの。目で見て言葉を認識するためのもの。  読む=「よむ」と読み、文字によって書かれた文章などを声に出して言葉にする。  書く=「かく」と読み、言葉を紙などの面にペンや筆を使ってあらわす。  歎異抄=「たんにしょう」と読み、親鸞(しんらん)の語った言葉を弟子の唯円が書き残したもの。  正法眼蔵随聞記=「しょうぼうげんぞうずいもんき」と読み、道元禅師が語った言葉を弟子の懐奘(えじょう)が書き残したもの。  凡夫=「ぼんぷ」と読み、仏教の教えを信じようとしない者。仏教を嫌いな人。  阿弥陀仏=「あみだぶつ」と読み、西方極楽浄土に住んでいると考えられ全ての人を救うほとけさま。  念仏=「ねんぶつ」と読み、「なむあみだぶつ」と口に出して唱えること。  救う=「すくう」と読み、苦しんでいる人たちをそこから助ける。  座禅=「ざぜん」と読み、足を組み手を組んで体を調え息を調え心を調える仏教の実践法。  専ら=「もっぱら」と読み、あることだけに集中すること。  悟り=「さとり」と読み、真理を知ること。仏法がどのようなものであるのかを知ること。  邪魔=「じゃま」と読み、さまたげること。仏教の修行をさまたげる悪魔。  認知レベル=「にんちれべる」と読み、あることを認めて知ることの段階。  格差=「かくさ」と読み、質などの段階の差。  抽象名詞=「ちゅうしょうめいし」と読み、普通名詞や固有名詞ではあらわせない名詞。たとえば「道、悟り、法、社会、文化」など。  固有名詞=「こゆうめいし」と読み、人の名前や地名などをあらわす時に使われる名詞。  不確定=「ふかくてい」と読み、はっきりしないこと。  要素=「ようそ」と読み、物事を成り立たせる性質。  執着=「しゅうちゃく」と読み、あることばかりに心がとらわれること。  響き=「ひびき」と読み、音として耳に聞こえるもの。  記憶=「きおく」と読み、過去に経験したことを心の中に残しておくこと。  曖昧=「あいまい」と読み、はっきりしないこと。 

いわれ(歴史)と重要度

歎異抄12      正法眼蔵随聞記6。   重要度=☆   難易度=むずかしい

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一文不知