●いろは歌

読み(ひらがな)

いろはにほへとちりぬるを わかよたれそつねならむ  うゐのおくやまけふこえて あさきゆめみしゑひもせすん。

意味

色は匂えど散りぬるを、我が世誰ぞ常ならむ。有為の奥山今日越えて、浅き夢見じ酔ひもせず。

解説

花はきれいに咲いたり匂ったりするけれど、いずれ、その花が散ってしまうように、この世界では、 世に生を受けたどんな生き物も、永遠にその姿をとどめることはできない。このような真理を悟ることによって、 煩悩の大きな山を、今日、越えるならば、つまらない夢や迷いに惑わされる 事もなくなるのでしょう。この句は、「いろは」ですから、誰でも知っていると思いますが、仏教の無常観を あらわした七五調の手習い歌のようです。平安中期以降に、ひらがな47文字を1回ずつ使って、 お坊さんによって作られた今様歌のようです。

重要語の意味

色=結果として人が感覚的に認めることができるもの全て(見る、聞く、味、匂う、触感)。  匂う=色などが美しく映る。よい香りがする。  我が世=私たちの生きるこの世、この世界。現世。  常=物事が変わらないこと。  有為の奥山=これは人の煩悩の大きさを山にたとえたのだと思われます。  酔う=「ゑふ」の転じたもの。あることに夢中になって心をうばわれること。  有為=この世の全てのものや現象。  煩悩=人の心身に必ずつきまとう欲望。貪(むさぼり)、瞋(いかり)、癡(無明)。  悟る=真理としての道理を、体と心をもって完全に自分のものとすること。

いわれ(歴史)と重要度

雪山偈の日本語版   重要度=☆☆☆

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雪山偈

雪山偈とは、「諸行無常、是生滅法、生滅滅己、寂滅為楽」 という短い句ですが、この中に、仏教の基本的な考え方が 書かれています。この句は、お釈迦様の 前世のことを詠った句のようで、ヒマラヤで修行中に、羅刹(らせつ) という人食い鬼に自分の命をささげてまで、下の句(生滅滅己、寂滅為楽)を知ろうとした 物語として歌い継がれてきたもののようです。

諸行無常=色は匂えど散りぬるを。  是生滅法=我が世誰ぞ常ならむ。  生滅滅己=有為の奥山今日越えて。  寂滅為楽=浅き夢見じ酔ひもせず。 

選葉
[01]→02