●一念三千
読み(ひらがな)いちねん さんぜん |
意味私たち凡夫が、一瞬にしてあらわす心には、三千という大きな世界が備わっている、ということ。 |
解説これは仏教語です。天台宗の教えの基本で摩訶止観という座禅の思想を 説いた本にある言葉、「この三千は一念の心に在り」からの語です。 摩訶止観の巻五の第七章に「正しく止観を修す」があり、 「陰入を観ぜよ」という節の中で「陰入界の境を観ずとは」として説かれています。 とても難しいので私にもよくわかりませんが、多分、五陰と十二入と十八界を 観察することによって、十八界のひとつ、法界が、十界と十如是と三世間によって 三千の世間を成立することを説いているようです。この事を体得するには、 止観によって心の不可思議さを感じなさいということを示しているのだと思います。 一念三千を別の言葉で示した語が摩訶止観の中にありますので、それも載せておきます。 「心はこれ一切の法、一切の法はこれ心なり」。 私たち凡夫には、よくわからない考え方ですが、座禅や念仏を正しく実践することによって、 その境地を得ることができるのだと思います。 |
重要語の意味一念=「いちねん」と読み、一瞬の心。念は基本的に生住異滅を繰り返す。 三千=「さんぜん」と読み、三千の世界観。三千の世間。三千の境界。 念=おもう。かんがえる。こころ。一心。きわめて短い時間。 千=せん。百の十倍。 天台宗=「てんだいしゅう」と読み、中国北斉の慧文、慧思を経て隋の智ぎによって大成した大乗仏教。 摩訶止観=「まかしかん」と読み、天台宗の智ぎが止観の考え方を説法したものを弟子が書き残した書物。594年頃の説法。 座禅=「ざぜん」と読み、足と手を組んですわり、姿勢と呼吸と心を整える実践法。 止観=「しかん」と読み、シャマタとビバシャナ。心を一念にとどめて正しく心を観察すること。禅那。 修する=「しゅする」と読み、実際に行う。 境=「きょう」と読み、六境。眼、耳、鼻。舌、身、意の対象となるもの。 五陰=「ごおん」と読み、五蘊と同じ。色受想行識。 十二入=「じゅうににゅう」と読み、十二処ともいう。六根と六境。眼、耳、鼻。舌、身、意。と、色、声、香、味、触、法。 十八界=「じゅうはっかい」と読み、六根と六境と六識がつくり出す界。 法界=「ほっかい」と読み、意識の対象となるもの全て。十八界のひとつ。「ほうかい」とも読む。 十界=「じっかい」と読み、地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人間、天上、声聞、縁覚、菩薩、仏。 十如是=「じゅうにょぜ」と読み、相、性、体、力、作、因、縁、果、報、本末究竟等。 三世間=「さんせけん」と読み、衆生世間、五蘊世間、国土世間。 世間=「せけん」と読み、人々が生活している場。世の中。 不可思議=「ふかしぎ」と読み、思議することが不可能なこと。言葉で考えても分からないこと。 智ぎ=「ちぎ」と読み、天台宗の第三祖。法華玄義、法華文句、摩訶止観などを残した高僧。[538-597]。 |
いわれ(歴史)と重要度摩訶止観・巻の五。 重要度=☆☆☆ 難易度=むずかしい。 熟語分類=仏教 |