●万物斉同

読み(ひらがな)

ばんぶつ せいどう

意味

すべてのものは、ひとしく同じである、ということ。

解説

人の認識の世界では、「善い悪い」、「美しい醜い」などの区別をしてしまいますが、 道という立場から見ると、すべてのものが同じであるとする認識のようです。 この考え方は、荘子という本の中にある説で、次のような特徴があると思います。 @道または天籟として示されるもの。A言葉を超越しているもの。 Bわれを喪うことによって近づくことができる。C天地は我と並び生じて、万物は我とひとつである。 D道と一体化すれば、真の自由が得られる。    万物斉同という考え方は、中国に伝わった仏教に影響を与え、やがて禅という考え方が生まれていったと思います。 仏教の禅の考え方には、上で示した五つの特徴に近いものがありますので番号順に禅の考え方をのせておきます。 @空として示されるもの。A不立文字。B無念無想。非思量。 C無一物中無尽蔵。D空を悟れば煩悩から生じる苦しみを除くことができる。    「道」という言葉は、老子という本の中にも出てきますが、老子の説明は抽象的で分かりにくい内容ですが、 荘子では、具体的に示されているので比較的わかりやすいと思います。

重要語の意味

万物=「ばんぶつ」と読み、この世界にあるすべてのもの。  斉同=「せいどう」と読み、ひとしく同じ。  万=すべて。よろず。  物=もの。ものごと。現象。  斉=ひとしい。  同=おなじ。  認識=「にんしき」と読み、外のことを見たり聞いたりして何であるのかを知ること。  醜い=「みにくい」と読み、好ましくないようす。  道=「どう」と読み、この世界をつくっている根源であり変化するもの。玄ともいう。タオ。  荘子=「そうじ」と読み、中国戦国時代(紀元前300年ごろ)の思想家、荘周があらわした道教の書物。南華真経。  特徴=「とくちょう」と読み、他のものと比べて目立つところ。  天籟=「てんらい」と読み、天のひびき。天の波動。宇宙の意志のようなものか或はダークマターか。他に地籟と人籟がある。  超越=「ちょうせつ」と読み、ある限界をはるかに超えること。  喪う=「うしなう」と読み、自分から離れて自分のものでなくなる。  禅=「ぜん」と読み、中国に伝わった仏教が座禅を中心にした教えとして成立したもの。唐の時代に栄えた。  空=「くう」と読み、すべてのものは縁起によって成っているため実体がないとする考え方。般若経で重んじられるもの。  非思量=「ひしりょう」と読み、思考活動が止まっている状態。  無一物中無尽蔵=「むいちもつちゅうむじんぞう」と読み、自分のものがなくなった時、外の世界と一体になったと感じること。  老子=「ろうし」と読み、中国春秋時代の思想家である道教の開祖・老たんがあらわした書物。 

いわれ(歴史)と重要度

荘子・斉物論(せいぶつろん)。   菜根譚・前集103、171。     重要度=☆     難易度=むずかしい

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万物斉同


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