●一樹の陰一河の流れも多生の縁

読み(ひらがな)

いちじゅのかげ いちがのながれも たしょうのえん。

意味

この世の中で起こるさまざまな出来事は、すべて前世からの因縁によるものなので、おろそかにしてはならない、という教え。

解説

お互いに知らない者であっても、偶然、同じ木の下で雨宿りをすることになったり、また、同じ川の流れの水を飲んだりするのも、 自分が生まれる前の多くの生による因縁が起こしているのだから、おろそかに思ってはならない、ということのようです。 前世からの因縁と同じ意味の「多生の縁」を音吉は次のように考えます。自分を生んでくれた父と母、そして、その父と母を生んでくれた それぞれの祖父と祖母、そしてその祖父と祖母には、それぞれの親がいるはずです。このように考えていくと非常にたくさんの祖先の生の経験が 積み重なって今の自分が、この世に生まれてきたことになります。そして、このような長く続いた多くの生の記憶が複雑に関わり合って、 今の私の行動を起こそうとしていると考えることができます。つまり、一切の出来事は、「多生の縁」によっているということです。 また、「多生の縁」の中には、現世での因縁も含まれていると思います。この考え方は、仏教の基本的な教えのようです。 尚、「多生」については、雑阿含経の無始相応の土丸粒の項を参考にしました。詳しい内容は、増谷文雄さんの阿含経典が参考になります。

重要語の意味

一樹=「いちじゅ」と読み、土に根をはって生きている一本のき。  陰=「かげ」と読み、ものにおおわれているところ。  一河=「いちが」と読み、ひとつのかわ。  流れ=「ながれ」と読み、みずがながれること。  多生=「たしょう」と読み、多くの生を経験すること。父と母、祖父と祖母などのように多くの世代が受けつがれ繰り返されていく生命。「他生」とも書く。  縁=「えん」と読み、めぐりあわせ。つながり。因縁。  出来事=「できごと」と読み、みずからが行動したことによって自分のまわりに起こるさまざまなこと。  前世=「ぜんせ」と読み、生まれる前の世。生まれてくる前に生きていたこと。  因縁=「いんねん」と読み、原因とそのつながり。すべてのものは、いくつかの原因と、その原因のつながりよって生じているということ。  おろそか=ものごとをいいかげんにするようす。大切にしないようす。  偶然=「ぐうぜん」と読み、おもいがけないこと。思ってもいないこと。  雨宿り=「あまやどり」と読み、雨が降っている時その雨にぬれないように物のかげに入ること。  飲む=「のむ」と読み、水などを口に入れてのどを通すこと。  祖父=「そふ」と読み、おじいさん。親の男親。誰にも必ず2人いる。  祖母=「そぼ」と読み、おばあさん。親の女親。誰にも必ず2人いる。  親=「おや」と読み、自分を生んでくれた父と母。  祖先=「そせん」と読み、一族の初代から先代までの多くの人々。  経験=「けいけん」と読み、目や耳や鼻や舌などを使って見たり聞いたり食べ物を味わったりして体で感じること。五感を体でためすこと。  積み重なる=「つみかさなる」と読み、たくさんのものが重なって大きくなる。  記憶=「きおく」と読み、経験したことを蓄えていること。前世での記憶は潜在意識として働く。主に脳に蓄積される。名色。  複雑=「ふくざつ」と読み、さまざまなものが、たくさんあり、わかりにくいこと。  関わり合う=「かかわりあう」と読み、異なるものが互いに関係をもつ。  行動=「こうどう」と読み、心の中で考えた事をもとに体を動かしたり言葉をしゃべったりすること。  現世=「げんせ」と読み、現在、自分が生きているこの世界。  仏教=「ぶっきょう」と読み、お釈迦さんのおしえ。 

いわれ(歴史)と重要度

平家物語。   謡曲「千手」。   増谷文雄・阿含経典第一巻・無始相応・1草薪(283ページ)。    重要度=☆☆☆    難易度=むずかしい

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