●厭離穢土
読み(ひらがな)おんり えど |
意味三界であるこの世を汚れたものとして、嫌って離れようとすること。 |
解説この世は、迷いや苦しみの多い世界であると考えて、欲界という世界から離れようとすることと思います。 一般の人は、「この世がけがれたもの」という認識は、ほとんどありませんから、なじみのない言葉だと思いますが、 仏教では、よく用いられる考え方です。特に、方便として示されている欲界の六道は、欲が原因となり苦しみをもたらす 世界で、地獄、餓鬼、畜生の3つは、最もけがれたものとされています。けがれは、浄土における清らかさに対する言葉であり、 殺生、盗み、虚言、邪淫、三毒などが考えられます。この四字熟語の起源を調べてみましたら、次のようなことが分かりました。 平安時代の中ごろ、源信という僧侶が、仏教のおしえを書きまとめたものに、「往生要集」という本があります。 この言葉は、この本に出てくるもので後の浄土系の思想に大きな影響を与えたもののようです。また、この言葉は、徳川家康の 生まれた三河で、さかんであった浄土宗の考え方に引き継がれているようです。家康は、三河の松平家の生まれですが、松平家の 初代は、時宗の遊行僧であったらしく、代々受け継がれた考え方に、大樹寺の浄土思想があったのではないかと思います。 家康は、戦場へ出る時に、この言葉を幟の旗印に使っていたようで、これに続けて、「欣求浄土」の文字をつけていたようです。 家康には、戦国時代である穢土を終わらせ、江戸という平和な世の中を築きたいという志があったのだと思います。 |
重要語の意味厭離=「おんり」と読み、きらってはなれようとすること。いといはなれること。「えんり」とも読む。 穢土=「えど」と読み、けがれていて煩悩が多い世界。けがれた世界。 厭=いとう。いやがる。あきる。しずめる。 離=はなれる。 穢=けがれる。よごれる。きたない。 土=つち。大地。陸地。 三界=「さんがい」と読み、仏教で瞑想する時に使われる心の方便。欲界、色界、無色界。 汚れ=「けがれ」と読み、よごれていること。きたないこと。煩悩に覆われている世界。 嫌う=「きらう」と読み、きらいとおもう。いやだとおもう。 方便=「ほうべん」と読み、仏教へ導くためにたとえなどを使うこと。 六道=「ろくどう」と読み、衆生が生死を繰り返す迷いの世界。地獄、餓鬼、畜生、修羅、人、天。はじめの3つを三悪道という。 浄土=「じょうど」と読み、仏や菩薩が体得している苦しみのない世界。阿弥陀仏の住んでいる極楽浄土。 三毒=「さんどく」と読み、むさぼり、いかり、おろかさ。 源信=「げんしん」と読み、天台宗の僧。良源に師事し空也から浄土往生の教えを授かる。[942-1017]。 往生要集=「おうじょうようしゅう」と読み、この世を汚れた世界として離れ、極楽浄土へ生まれ変わることを説いた本。 徳川家康=「とくがわいえやす」と読み、関ヶ原の戦いで勝利をし、1603年に征夷大将軍に任じられ江戸に幕府を開いた武将。[1542-1616]。 三河=「みかわ」と読み、昔の地名、現在の愛知県中東部。 時宗=「じしゅう」と読み、鎌倉時代に一遍上人が起こした浄土宗のひとつ。各地をまわって念仏をとなえることを説いた。 遊行=「ゆぎょう」と読み、僧侶が自身の修行を兼ねて仏教を広めるために各地を巡って歩くこと。 大樹寺=「だいじゅじ」と読み、岡崎市にある浄土宗の寺。松平家の菩提寺。松平家の四代、親忠が建立したもの。 幟=「のぼり」と読み、のぼりばた。たてに長い布の上と横にミミをつけてさおを通して目印にするはた。 旗印=「はたじるし」と読み、戦上で目印とするため旗に書く文字。 欣求浄土=「ごんぐじょうど」と読み、極楽浄土を心から願い求めること。 煩悩=「ぼんのう」と読み、欲から生じる心の、わずらわしさと、なやみと、くるしみ。 |
いわれ(歴史)と重要度往生要集。 重要度=☆☆☆ 難易度=むずかしい |
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