●一字不説

読み(ひらがな)

いちじ ふせつ

意味

釈尊が悟った真如については、一字も説いていないが、その真如に至る 論理と方法として四諦と八正道の方便を示した、ということ。

解説

言葉がなければ自分の考えを他人に伝えることはできません。 しかし、釈尊の悟った真理は、言葉では説明できません。それ故に、 釈尊は、その真理に近づく論理として言葉を用いた四諦と、それに関係する 蘊処界などを説いたのだと思います。 釈尊の悟った真如は言葉では言い現わせませんから、「真如」という響き のある言葉として断定した時、それはもう既に真如ではなく、各個人がそれぞれ 思い描く別のものになってしまいます。経典に書かれている内容から真如を 引用してみますと、「真如は常住であり求める者が自ら覚るべきものであり 言葉という限界を離れている」ということです。 禅宗では、古くからこの「一字不説」が使われてきたようで、他の言い回しとして 「不立文字」があります。

重要語の意味

一字=「いちじ」と読み、ひとつの文字。  不説=「ふせつ」と読み、説いていないこと。説にあらず。  字=もじ。じ。  不=打消しの助字。にあらず。  説=とく。のべる。おしえる。  釈尊=「しゃくそん」と読み、お釈迦さん。ブッダ。如来。仏教を初めて広めた人。  真如=「しんにょ」と読み、言葉では言い現わせないもの。釈尊が悟った何か。真理。法。縁起。如如。  論理=「ろんり」と読み、事実としての法則的構造。客観的に認識できる法則。  方法=「ほうほう」と読み、やりかた。目的に至るためのやりかた。  四諦=「したい」と読み、方便としての四つの真理。@苦しみ。A苦しみの原因。B苦しみを滅すること。C八正道。  八正道=「はっしょうどう」と読み、苦しみを乗り越えるための八つの方法。正見、正志。正語。正業。正命。正勤。正念。正定。  方便=「ほうべん」と読み、真如に導くための方法。  悟る=「さとる」と読み、八正道を成就すること。  真理=「しんり」と読み、正しい道理。  蘊処界=「うんじょかい」と読み、五蘊と十二処と十八界。陰入界とも言う。  響き=「ひびき」と読み、音として回りに伝わること。  断定=「だんてい」と読み、定められた判断。  経典=「きょうてん」と読み、楞伽経、雑阿含経。  常住=「じょうじゅう」と読み、如来が世に生まれようが生まれまいがこの世に存在していること。永遠に存在すること。 時にかかわらず来たり見よというべきもの。  自ら=「みずから」と読み、おのずから。自分から。  覚る=「さとる」と読み、真理を体得する。実際に経験として真理を知る。  限界=「げんかい」と読み、それ以上になると役に立たなくなる境目。かぎり。  離れる=「はなれる」と読み、遠く隔たっている。  禅宗=「ぜんしゅう」と読み、坐禅を主たる教えとして広まった仏教の一派。  言葉=「ことば」と読み、声や文字にあらわして情報などをやり取りするもの。 

いわれ(歴史)と重要度

楞伽経・自得本住分。   重要度=☆☆    難易度=むずかしい。   熟語分類=仏教

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一字不説


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