●大隠は市に隠る

読み(ひらがな)

たいいんは いちに かくる。

意味

本当に悟りを得た隠者は、町の中で目立つことなく民衆と一緒になって生活している、ということ。

解説

悟りを求めている者は、多くの場合、瞑想に専念するため、町を離れ 山の奥に隠れ住んでしまいますが、悟りをしっかりと理解している者は、 山に入ることなく町の中で民衆とともに暮らしている、ということのようです。 このような人の例として、日本では空也、行基などが考えられますが、 その他にも民衆の中へ入っていった有名無名の僧侶はたくさんいたと思います。また、 原始仏教で行われていた出家者による頭陀行の1つである乞食も 考えられます。悟りを求めている比丘が民衆とつながりを持つことにより 自他の救済に努めていたのではないかと思います。また、 類似の言葉に「和光同塵」があります。

重要語の意味

大隠=「たいいん」と読み、悟りを得た偉大な隠者。  市=「いち」と読み、町の中。民衆の中。  隠る=「かくる」と読み、目立つことなく生活する。かくれる。  悟り=「さとり」と読み、瞑想によって得られる三昧の境地から得るもの。三昧の境地はいくつもあり、 その進歩する段階の中で悟りに近づいていく。  隠者=「いんじゃ」と読み、世俗のわずらわしさをのがれるため人里を離れる者。 @自我の充足のために隠遁する者と、A宗教的意義を求めて隠遁する者の二者がある。  民衆=「みんしゅう」と読み、世の中の一般の人々。しょみん。  瞑想=「めいそう」と読み、精神の集中をもって心身の観察をすること。沈思黙考。  専念=「せんねん」と読み、あるひとつのことに心をかたむけること。  空也=「くうや」と読み、平安時代の念仏聖。市中に乞食し貧民に施物を与えていた。社会事業も手がけた。[903-972]。  行基=「ぎょうき」と読み、奈良時代の僧。仏教の民間布教と社会事業に尽くす。東大寺の大仏建立に協力。[668-749]。  無名=「むめい」と読み、あまり名前が知られていないこと。  僧侶=「そうりょ」と読み、悟りを求め仏道修行をしている者。  原始仏教=「げんしぶっきょう」と読み、部派仏教に分裂する以前の釈尊の教え。  頭陀行=「ずだぎょう」と読み、出家者に求められる12の生活規範。煩悩を取り除くための実践項目。  乞食=「こつじき」と読み、俗世の家をまわって食事をいただくこと。  比丘=「びく」と読み、托鉢をする者。食事を乞うもの。  自他=「じた」と読み、自分と他人。自分と食べ物を与えてくれた信者。  救済=「きゅうさい」と読み、困ったり苦しんだりしている者をすくうこと。  努める=「つとめる」と読み、ちからをつくす。  和光同塵=「わこうどうじん」と読み、徳としての光をやわらげ民衆と同化すること。 

いわれ(歴史)と重要度

王康(おうこう)きょ・反招隠(はんしょういん)。     十牛図・入廛垂手。   重要度=☆☆☆     難易度=むずかしい

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隠遁(いんとん)

瞑想を深め悟りに近づく為には多くの外的魅惑や 迷いの原因などを取り除き五感を清浄に保つ必要があります。 そのため仏道修行者は町を離れ山に入っていくのだと思います。 日本でも多くの僧が遁世(とんせい)をしていたようですが、 有名な僧侶、4名をあげてみます。 @最澄=比叡山・延暦寺。 A空海=高野山・金剛峯寺。 B道元=吉祥山・永平寺。 C日蓮=身延山・久遠寺。 現在でも、僧侶になるためには、ある一定の期間、 仏道修行に励むため隠遁生活が必要であると思います。

【仁者は山を楽しむ】

大隠
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